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水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

豊富な食材で料理を楽しむ

シルクロードの隊商が到達したバクーの街には、バザーと言う迷路のような市場がある。

仕事の帰りにときどき立ち寄って自分で料理する素材を仕入れる。


朝、道の街路樹につながれていた牛が、帰りにはその木に吊るされている。

したがって、肉はとても「新鮮である」。

肉だけではなく、肝臓も内臓も、頭もすべて生身で塊りで売ってある。

ここでは、「肉の素性がはっきりしている。」

バザーには羊や、牛や豚の胴体や太ももがぶら下がっている。

日本のパックの肉は、どこから切り取った肉か「得体が知れず」、

やや疑いが残るけど、ここでは、「得体が知れている。」

客は言う。

「そこんとこの背骨の肉を斜めにこんな風に切って骨ごと5kg欲しいんだけど」

肉屋は、大きな台の上にどさっと肉塊を置いて、大きな鉄のナタを振り下ろす。

だから牛の肩のところとかわき腹とかフィレ肉とか自在に指定できる。

九州、博多の長浜ラーメン横丁の屋台の豚ばらという骨付き肉はとてもおいしい。

今日は、それを食べたくて、骨付き豚ばら肉を1kg。

それにステーキ肉を1.5kg。 だいたい1kgが600円ほど。

いつも英語を流暢に話すおばさんに今日もつかまった。

チーズは要らないかと。

日本のチーズは、銀紙に包んで綺麗な包装につつんであるけど、

肝心のチーズが少ない。余計な手間を省いて中身を増やしてほしい。

ここではチーズは裸売り。

フランスパン2個ほどのかたまりが500円ほどで買える。

たった今、牛乳に塩を加えてかき混ぜて固まったばかりのようなまさしくチーズそのもの。

チーズはいらないから、キャビアが欲しいと言うと、

こっそり小さな部屋にいれられて鍵をかけられた。

いまは禁猟期で捕れないはずのキャビアが、瓶にたくさん並んでいる。

良心的な店は、ふたをする前に客に味見させて、客が納得したらふたをする。

先日、他所では、2000円前後だったキャビアが1瓶113g10ドルだと言う。

食べてみた。

みずみずしい取れたての薄塩。うす緑色の粒が舌の上で溶ける。

キャビアのうまみは飲み込んだあとからやってくる。

舌の上でころがして、こらえきれずに飲みこんだ後に

のど元から、甘いくすぐるような旨みの感覚が登ってくる。

とりあえず、二瓶買った。

部屋の戻って早速、スプーンですくって食べてみる。

うまい!

今夜の料理の構想を練る。

先日、山仲間が送ってきた「即席マルタイラーメン」と言う、最近では

飢えた山仲間しか食べなくなったが、昔風の美味しい「原初的」ラーメンを思い出した。

まず、たまねぎと豚ばらの肉片をスープ取りに煮沸。

一方で、豚ばら肉をオリーブオイルと塩胡椒で焦げ目をつけながら

こんがりとフライパンで焼く。

そして、できたじゅうじゅうと音を立てている豚肉数片とキャビアをラーメンに放り込む。

題してコーカサス風キャビアラーメン。

それに地酒の黒ビールとキャビアをスプーンで賞味しながらの、初夏の夕餉となった。

ロシア語の先生に「ノートルダムのせむし男」の歌を

翻訳してもらった後だったので、もう9時を過ぎていた。

いつしか黄昏が迫り、明けた窓からは心地よい初夏の風が入ってくる。

   夕暮れは忍び足なり青嵐


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